「雪明りの路」
Gallery 2002年1月〜3月
新谷保人・撮影
 
 
ああ 雪のあらしだ。
家々はその中に盲目になり 身を伏せて
埋もれてゐる。
この恐ろしい夜でも
そつと窓の雪を叩いて外を覗いてごらん。
あの吹雪が
木々に唸つて 狂つて
一しきり去つた後を
気づかれない様に覗いてごらん。
雪明りだよ。
案外に明るくて
もう道なんか無くなつてゐるが
しづかな青い雪明りだよ。

(伊藤整『雪明りの路』より「雪夜」)
 
 
No.55 (手宮線跡会場/2002.2.9)
 
 
No.56 (手宮線跡会場/2002.2.9)
 
 
No.57 (手宮線跡会場/2002.2.9)
 
 
No.58 (手宮線跡会場/2002.2.9)
 
 
No.59 (堺町/2002.2.9)
 
 
No.60 (小樽運河会場/2002.2.9)
 
 
No.61 (小樽運河会場/2002.2.9)
 
 
No.62 (小樽運河会場/2002.2.9)
 
 
No.63 (ホテル・ソニア/2002.2.9)
 
 
No.64 (小樽駅/2002.2.9)
 
 

 
Gallery 1月
 
かすかな嵐の音がする。
夕暮五時
風がそうつと 雪のくぼみや木の根にまつわり
凍てついた道を越えて
冷たく硝子戸をならす。
まだ明りはつかず 女は薄暗い台所に急がしく
黒い外套の人が
帰りついて戸口をあける。
街ではかなしい豆腐売りの笛がなる。
夕方鋭い空気のなかに
遠くで 心の及ぶ限りの遠くの野で
風が林に入る音だよ。

(伊藤整『雪明りの路』より「冬の詩三篇」)
 
     
No.65 (祝津/2002.1.5)    No.66 (高島港/2002.1.5)   No.67(高島港/2002.1.5)
 
     
No.68(望洋シャンツェ/2002.1.12)  No.69(交通記念館/2002.1.5)  No.70(毛無山/2002.1.20)
 

 
Gallery 2月
 
山がなる 山がなる
谷も道も平らになつて
雪が真白に 小さな生物みたいに狂つて降る。
その中に時折見えるのは
すつかり裸になつた落葉松の林だ。
母よ 硝子戸といふ硝子には
白く雪がかかり
いつ夕暮れがやつて来たのか
時計は漸く四時をうつたが
貧しい洋燈の灯をともそ。
畳の古んだ部屋で
兄弟はみな炬燵に入り
母は台所で夕げの膳の支度をする。
弟らよあの音をきけ
あの吹雪を。
こんな晩はみんな早く寝るのだよ。

(伊藤整『雪明りの路』より「冬の詩三篇」)
 
     
No.71 (天狗山/2002.2.3)   No.72 (天狗山/2002.2.3)   No.73  (天狗山/2002.2.3)
 
     
No.74(潮見台/2002.2.3)   No.75(短大より/2002.2.25)  No.76(短大より/2002.2.25)
 

 
Gallery 3月
 
    −武田教授の言葉から−

でもね やがて桜も咲くし
たんぽぽも咲きますよ。
あの雪が消えてしまふと
一面に黄色になつて
おてんと様と雲雀とが
夢を見合つてゐるやうな日が続きますよ。
まあ それまでお待ちなさい
それは夢のやうに来ますよ。

(伊藤整『雪明りの路』より「冬の詩三篇」)
 
     
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