戦況第一報……希望確実
アカシヤの子の君の御手紙、昨日御令弟より難有頂戴いたし候。愈々の御決心、我党の士の為めに万歳を三唱すべし。
社長昨日来る筈にて来らず、本日来る筈にて来らず、明日こそ愈々来るとの事に候。
然れども小生の札幌行は決して無益に候はざりき。昨日出札して本日帰社せる小林庶務、本日小生を別室に呼びて白石杜長よりの伝言を伝へて曰く、大体君の意見に依る故安んじて筆を執られよと。小生は札幌を立つ時意見の概略を認めて社長に送りしに侯ひき。
明日は関ケ原なり、震天動地の改革恐らくは意外に早からむ。天下分け目の戦ひ、月桂冠をうくる者我等に非ずしてまた誰ぞ。機械活字は本年中に完備すべく候、六頁になる迄は模範的の四頁新聞を作らむ。既に六頁なりたる時は其二頁だけを市中に商況を主とする夕刊として発行する計画也。明年一月より半ケ年間の大活動は天下の大勢をして、我が掌中に帰せしむ。
工場の信用は既に我が掌中にあるものゝ如し。
十三日夜九時 啄木
天峰大兄 御侍史
二白、昨日小林庶務、社長の命によりて道庁に兄を訪ひしも、兄上在なりしと申居り候
※テキスト/石川啄木全集・第7巻(筑摩書房 昭和54年) 入力/新谷保人